A.後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算定します。
後遺障害逸失利益=基礎収入の額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応したライプニッツ係数
基礎収入の額
基礎収入の額は、原則として事故前の現実収入を基礎とします。主婦等の家事従事者は、女性平均賃金の額を基礎とします。兼業主婦は、現実収入と女性平均賃金のうちより高額のものを基礎とします。事故当時、未就労の学生等は、平均賃金を基本とします。また、20代の若年労働者も平均賃金を使用することがあります。
労働能力喪失率
労働省労働基準局通牒の別表に、後遺障害の等級別の労働能力喪失率の記載があります。その数値を参考に、被害者の個別事情も斟酌して決めます。喪失率表の具体的な内容については、「赤い本」(民事交通事故訴訟損害賠償算定基準:財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)等を参照してください
労働能力喪失期間
原則として、症状固定日から67歳までの期間。症状固定日に未就労の学生、児童は、高校卒業時、又は、大学卒業時から67歳まで。高齢者の場合は、症状固定日から67歳までの期間と統計資料による平均余命までの期間の2分の1とを比較し、より長い方となります。67歳以上の方は、当然、平均余命までの期間の2分の1です。
また、いわゆるむち打ち症の場合は、第14級該当事案で2年~5年、第12級該当事案で5年~10年程度とする裁判例が多いようです。
ライプニッツ係数
後遺障害逸失利益は、本来は、毎年発生するものです。そのため、例えば10年後に失われる100万円の賠償を現在行うのであれば、その金額は100万円より小さくなります。なぜなら、現在の100万円は利息がついて、10年後には100万円以上の金額となるからです。このように、将来発生する損害の賠償を、現在の金額に引き直すことを中間利息控除と言います。現在の実務では、5%金利の複利計算で行われる事例が大半です。そして、複利計算の中間利息控除を行うための係数をライプニッツ係数と呼びます。