Q.相続人のうち、一人だけが被相続人の生前に多く貰っています。遺産分けでは考慮されないのですか?(特別受益)


A.共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受け、又は、被相続人の生前に特別の贈与を受けていた者がいる場合には、特別受益として遺産分けで考慮されます。

遺贈というのは、遺言によって被相続人の財産を無償で他人に与えることです。また、特別受益として問題となる生前の贈与は、その贈与が実質的に相続財産の前渡しと見うるものである必要があり、ある程度高額な贈与に限られます。

 

なお、共同相続人の一人が被相続人の死亡による生命保険金の受取人に指定されていた場合、受取人である相続人は多額の保険金を受領することもありますが、原則として特別受益としては考慮されません(例外あり)。特別受益がある場合の遺産分けの方法は次のとおりです。

 

設例:父親Hが死亡し、子であるAとBの二人が相続する(母親は先に死亡)。Hの死亡時の遺産は1000万円だが、AはHの生前、商売を始める資金として600万円の贈与を受けていた。

 

①まず、H死亡時の遺産1000万円に生前の贈与600万円を加算する。

②次に、1600万円をA,Bの法定相続分(各2分の1)で分ける(一人800万円)。

③Aの相続分は、計算上の800万円から既に貰った600万円を差し引いた200万円。

④Bの相続分は800万円。

⑤なお、H死亡時の遺産が100万円だった場合は、Aの相続分はマイナス250万円となる。この場合はAの取り分は0円となり、Bに差額を返す必要はない(但し、Bが遺留分減殺請求権(Q16参照)を行使した場合を除く。)。 

⑥設例の場合で、Aに対して生前の贈与ではなく、遺贈で600万円を渡すとされた場合は、Aが600万円を取得し、Bが400万円を取得する。

 

上記設例で、Aが生前に贈与を受けていた600万円について、計算上遺産の額に加えることを特別受益の持戻しと言いますが、被相続人の意思表示によりこれを行わないようにすることもできますが、遺留分(Q16参照)に反することはできません。